はじめに
中年男性に交友を持ちかけ、親密になった後に虚偽の事柄で金銭が必要になったことを伝え、10万円~1000万の金額を騙し取る「頂き女子攻撃」が社会問題となっている。その被害額は一人の女性につき最大3億円にも登り、被害者男性が容疑者女性を刺殺してしまう事件も発生した。
この記事では、その攻撃手法についてもっとも広範に渡って公開されているLiLi攻撃を紹介し、その対策方法を考察する。
対象となるすべての男性は、その対策方法を熟知することで詐欺被害から自衛することができる。
頂き女子攻撃の定義
りり[1]の頂き女子マニュアルによって詳細に説明されたされた頂き女子攻撃を一般化して整理する。
攻撃者を「頂き女子」と呼称し、攻撃対象を「おぢ」と呼称する。攻撃者の成功条件はおぢから金銭を獲得することである。
頂き女子攻撃をいくつかのフェーズに分解することで定義する。
- Relationship Commitmnet (RC): 頂き女子がおぢと何度かチャットやオフライン交流を経て信頼関係を築く
- Attack: 頂き女子がおぢへ金銭が必要な問題が発生したことを伝え、自主的に送金させる
- After Care (AC): 頂き女子がおぢへ問題が無事解決したという感謝を告げる
おぢの分類
りり[1]によると、おぢは以下の3パターンに分類される。
- テイカーおぢ: 頂き女子の金銭的要求には応えようとせずに自身の欲を満たすことを目的としているおぢ
- マッチャーおぢ: 自身の欲を満たした分の金銭的要求には応えようとするおぢ
- ギバーおぢ: 無償で金銭的要求に応えるおぢ
LiLi攻撃
りり[1]の頂き女子マニュアルによる具体的な攻撃内容をLiLi攻撃として定義する。ここでは各フェーズにおけるLiLi攻撃のパターンを説明する。
- Relationship Commitmnet (RC)
- 純粋に魅せる会話
- 素直に魅せる会話
- ルーティン化させる会話
- 思い出作り会話
- トキメキさせる会話
- 過去をみせてあげる会話
- がんばりやさんアピール会話
- か弱い女の子アピール会話
- ゆめをもった女の子アピール会話
- お金目当てに思わせないための会話
- 求めてあげる会話
- …
- Attack
- おぢに心配させる会話: 「ちょっとLINEできなくなるかも」「ちょっと精神的に辛くなっちゃって」
- 悩みを言う前の会話: 「ううん。なんでもない。気にしないで」「おぢともっと話してたいけど、ごめん」
- おぢの方から悩みを聞かさせる会話: 「おぢには言いたいけどやだよ……嫌われたくないの」
- お金の悩み: 「すごい前にその人から借りかあって、それを返さないといけないの。」
- After Care (AC)
- Loop
- 1に戻る
上記より、LiLi攻撃はRelationship Commitment (RC)フェーズで感情的依存と信頼感を確立することで金銭取得確率を高めるという戦略であることが明らかとなった。
つまりこの攻撃は、金銭的利益のために感情的な絆を深めて利用する心理操作パターンと分類することができる。これは結婚詐欺やスパイ活動と同様の攻撃である。
このような攻撃において、Attackフェーズで対策を講じることは難しい。すでに被害者であるおぢの心身が掌握されてしまい、合理的判断ができないためである。
ここでは、その前段となるRelationship Commitment (RC)フェーズで回避することを主軸とする。
また、あえてAttackフェーズにおける合理的判断も列挙することにより、何か発生したときにもこの記事がおぢの目を覚まさせることを期待する。
LiLi攻撃への対策
テイカーおぢに擬態する
いきなり呼び捨てで呼ぶ、上から目線、使い回しのテンプレート文章をつかう、エロ目的を丸出しにする、という行動を初手に行なうことで、頂き女子にテイカーおぢだと思わせる。
LiLi攻撃では、頂き女子がおぢをテイカーおぢ認定すると回避行動に出る。「しね」と送られてきたら「お前がな」と返信する。これで回避成功となる。レスバもおぢの勝利だ。
この手法はLiLi攻撃を用いる巧妙な頂き女子を避けることができ、LiLi攻撃を知らない未熟な頂き女子からテイクしまくることが可能となる。
同様に、年収を1000万円未満に設定したり、お金のかかる趣味があることを公開することも有効となる。しかし、LiLi攻撃以外の攻撃に対して脆弱な可能性がある(刺殺事件を参照)。
心を開かない
りり[1]の第6章では信頼関係構築の見極めが記述されている。ここで、見極めチェックに反した行動を徹底することにより、頂き女子にまだ信頼関係が構築されていないと誤認させることができる。そうすることでRelationship Commitment (RC)フェーズは終わらずに、Attackを回避できる。
- わざわざ遠くまで会いに行かない
- 返事がこなくても追いラインをしない
- 「体調が悪い」と来たら「いたいのいたいのとんでけ!よし治ったなガハハ」と返す
- 自分の欲求をぶつけまくる
- 仕事中はメッセージの返事をしない
嘘を見抜く
そもそもその悩みの問題が作り話なので、話を聞いていっていくつか具体的な質問を投げかける。そこで出た矛盾を突き「◯◯なのに✗✗っておかしくない?」と突っ込む。どんどんボロが出て、相手から諦める。
しかし、この段階まで来ると正常な判断は難しく、「じゃあもうおぢとは話さない」と突き放されるとサンクコストが働くことが多い。なんとか前段階で食い止めることが望ましい。
しかし、ここで頂き女子に対し「嘘を突く女なんだ」という新たな発見をすることによりおぢ自身を催眠状態から覚醒させる可能性がある。
金がないと断言する
「その問題、すごく深刻だね。どうしてもなんとかしてあげたい。でも残念だけどいま口座に100円しかないんだ。プリキュアのフィギュアに使っちゃってね。100円でも振り込みたいけど手数料が取られて-100円になっちゃうんだ。ごめんね。」
そこで先延ばしして「来月になったら払えるよ」を繰り返すことで関係を続けることも可能である。
損切りする
Attackフェーズまできたところで無言で連絡を断つ。そして次の頂き女子を探す。
ポーカーでもリバーでオールインするのは簡単だ。本当に勇気がいるのはリバーでフォールドすることなんだ。
トレードでも下がったら塩漬けにして上がるのを待つことで、大切な資産を眠らせてしまうことになる。ある程度マイナスになったらすぐに損切りして次の取引機会を見極めるんだ。
大丈夫。つぎの頂き女子はすぐ見つかる。
さいごに
セキュリティとは攻撃と対策の攻防の歴史である。
おぢの対策が高度化することで頂き女子はさらにそれを上回る巧妙な手口を考える。その繰り返しだ。
この教訓を旨に、我々も常に警戒を怠ってはいけない。
この対策方法を積極的に更新し続けることで、被害から身を守れる人が一人でも増えることを願う。