発明元年

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あけましておめでとうございます。新年の挨拶と今年の抱負を話そうと思います。

もともと自分の活動動機は「発明を生む」ことにある。目の前で新しい何かが生まれる瞬間に立ち会えるほど心踊る瞬間はない。サンフランシスコで完全自動運転車に乗った時の衝撃、ブロックチェーンに出会ったときの衝撃、そんな「衝撃」の連鎖を生みたい。そして自分も一番大きな衝撃を与えたい。

2023/03 会社を閉じる

2023年、サンノゼでジョージタウン大学の松尾教授にお会いした。ビットコインやサイファーパンクが生まれた歴史についてお聞きしていくうちに、自分がやりたい発明のために必要なのは起業ではなく研究者としての知識・経験だと思い、会社を閉じて大学院に行くことを決めた。と同時に、せっかく日本にいる間に、発明に適した環境を日本にも作れないかと考え至った。

発明が生まれやすい環境については非常に興味があり、いくつかの文献をもとに「発明のすゝめ」という記事も書いている。

2023/05 研究所構想

2023年5月にvitaと出会い、発明をするための研究所構想について話した。0xTTKという名前は0xPARCSONYの前身である東京通信工業から取っている。SONYは戦後1946年に井深大らによって創立された会社であり

「技術者がその技能を最大限に発揮することのできる"自由闊達にして愉快なる理想工場"を建設し、技術を通じて日本の文化に貢献すること」

を設立目的としている。もともと天皇が使う黒電話などの突飛なメカをスクラップアンドビルドしていて、その副産物として生まれたのがあのヘッドホンやカメラなどの最先端技術の結晶である。そんな研究所をもう一度日本に創りたいねと話していた。

ただそのときは一緒にやることを断念した。主な理由はお互いの実力がまだ足りなかったことと、お互いの興味領域がかけ離れていたことだった。まずお互いが各々の研究を進め、芽が育ってから一緒にやるのがベストだと判断した。

2023/09 暗号プロトコルの研究をスタート

その年の9月に私は早稲田大学佐古研究室の修士課程に入学し、暗号理論・暗号プロトコルの勉強を始めた。

12月にvitaはTitania Researchを立ち上げ、イーサリアムの抱える経済インセンティブに関わる問題にフォーカスを当てた研究を開始した。

2024年1月には国内学会で発表を経験した。その折に暗号学者と開発者の交流会にも参加した。

大学院に半年通ったところで、研究室が産業からかけ離れていることに強い危機感を覚えるようになった。現実の課題を解決したい人が集まっているのに誰も現場の課題を知らない。そんな状態で果たして良い研究成果を上げられるのだろうか、と。その最大の理由はアカデミアと産業の交流できる場所が少ないことと、ギャップファンド(研究成果の実証実験(PoC)への投資)が少ないことが挙げられる。会社経営と研究のどちらも経験している立場から、その橋渡しをしたいと考えるようになった。

2024 研究

そして2024は修士1年目を終え、5本の論文の共著者となった。特にイーサリアム財団との共同研究はもっとも自分を成長させた。Progcrypto CampzkVM合宿などの研究合宿も開催した。

Progcrypto Campでリチャード・ハミングの「あなたとあなたの研究」という講演動画を観た。ハミングはもともとベル研究所にいた。ベル研究所では7人のノーベル賞受賞者が生まれており、シャノン、ノイマン、アインシュタインなどの偉大な研究者が在籍していた。

この講演で、ハミングは、ベル研究所の経験をもとに「偉大な研究成果を残すためのマインドセット」について話している。

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この講演で、偉大な研究成果を残すために必要なこととして挙げられるのは

  • 研究に必要なのは「正しい問題を、正しいタイミングで、正しい方法で解く」こと
  • よく働き、かつよく外に出て人に話すことが重要だ

というものだった。そして講演の中で述べている「最も偉大な研究成果は若いときに上げることが多い」という言葉にはとても勇気をもらえる。

2025 発明元年

2025/01/01からUzumakiという「イーサリアムの最重要問題に取り組む研究シェアハウス」を開始した。このシェアハウスには2つの目的がある。

まずは、研究成果を最大化することだ。リチャード・ハミングとベル研究所の哲学をもとに、研究に最適な環境をつくり、研究を後押しする。

つぎに、他分野の研究者同士や、研究者と産業が交流し、アイデアをスパークさせるためのハブとなることだ。前に述べたアカデミアと産業のギャップを解消するために、アカデミアが現場を知り、産業が歴史と知識を知るきっかけをつくる。

個人的な目論見としては、vitaとともに0xTTKで掲げていた研究所の前身として、日本特有のタイムマシン経営を打破し、世界で唯一のスタートアップが生まれる土壌を構築したい。

自分もまずはこの2025年、多くの研究成果を挙げ、国際学会で発表することが目標だ。

最終的には、分散コンピューティングによって計算リソース革命を起こす。お金や計算機を持っていなくても生成AIの学習やシミュレーションを実行できるようにすることで、アフリカの難民でも教育を受けられたり、しがない研究室からも発明が生まれやすくする。そして何兆もの素粒子や物理作用を制御する宇宙をコンピュータ上に実現する。


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