Beam Chainが生み出す発展に関する一考察

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cryptography

Devcon SEAで、Ethereum研究者のJustin Drakeが次世代コンセンサスレイヤー「Beam Chain」のロードマップを発表しました。Beam Chainの目的は、Ethereumのコンセンサスロジックを抽象化し、PoS(Proof of Stake)メカニズムを実現したBeacon Chainとは異なるアプローチを採ることにあります。本記事ではBeam Chainがもたらす可能性について考察します。この記事に入る前に、Justinの講演動画や他のまとめ記事をご覧いただくことをおすすめします。

コンセンサスロジックの抽象化

Ethereumは当初、Ethashと呼ばれるProof of Work(PoW)メカニズムを採用していましたが、The MergeによりProof of Stakeに移行し、Beacon Chainが導入されました。現在のコンセンサスクライアントにはLighthouse、Lodestar、Nimbus、Prysm、Tekuなどがあり、各クライアントは同一のコンセンサスロジックを仕様に基づき実装しています。

Beam Chainの主要なアイデアは、「ステートマシンロジックをzkVM(ゼロ知識仮想マシン)によって検証し、ブロックを認証する」というものです。このアプローチは、クライアントごとに独自のステートマシンロジックを定義できる一方で、そのロジックの実行結果をzkVMによって証明し、簡潔にブロックを検証できるようにするものです。

今までと異なるのは2点あります。まずコンセンサスクライアントごとに独自のステートマシンロジック(なにをしたらブロックを生成するか)を定義されます。次にコンセンサスクライアントにzkVMの証明/検証機能がつきます。そして、コンセンサスの流れは以下のようになります。

  1. ブロック提案者は、各コンセンサスクライアントで定義されたロジックを実行し、zkVMを通じて証明を生成します。
  2. ブロック検証者はロジックには関与せず、証明を検証し合格すれば署名を行います。
  3. 署名が一定数集まればブロックはチェーンに統合されます。

このプロセスにより、次の二つのメリットが得られます:

そうすることで、2つのメリットがあります。

  • コンセンサスロジックの柔軟性:コンセンサスロジックと実行が分離されるため、ロジックの変更が容易になります。
  • ディスク容量の削減:zkVMの証明をライトクライアントに適用でき、データ保持の効率が向上します。

コンセンサスクライアントは、gossipやforkchoiceなど多機能ですが、まずは「ステートの移行」のみをSNARKify(ゼロ知識証明の最適化)すれば十分とされています。

新しいコンセンサスロジックの可能性

Beam Chainにより、主に以下の二つの方向で新しいコンセンサスロジックの展開が期待されます。

方向1:Ethereumの課題解決や最適化

JustinがBeam Chainに注目した一因は、Ethereumが抱える遅延やMEV(Maximal Extractable Value)などの課題にあります。現在、こうした課題はプロトコルのアップデートに依存していますが、それには膨大な時間がかかり、FlashbotsやSUAVEといった外部アプリケーションに頼らざるを得ない状況でした。

Beam Chainの導入でコンセンサスレイヤー自体のアップデートが不要となり、課題解決に向けた迅速な改善が可能になります。具体的には以下のようなアイデアが考えられます:

  1. プライベートなブロック提案

    ブロック提案者が暗号化されたトランザクションをもとにブロックを構築し、証明と署名によってトランザクションが復号されることで、公平な取引環境を提供できます。

  2. ステートマシンの最適化

    コンセンサスクライアントに独自の証明アルゴリズムやGPU高速化を適用し、さらにTPS(秒間処理件数)を向上させ、柔軟なスマートコントラクトのサポートが期待されます。

方向2:協力による独自の計算実行

スマートコントラクトによる計算には限界があり、大規模な計算(例:AIの学習)はEVM単独では実行が難しいです。しかし、コンセンサスにこれを組み込めば、新たな可能性が生まれます。この考え方に近いものとして、EigenLayer AVS (Actively Validated Service)が挙げられます。Beam ChainがネイティブにAVSをサポートすることで、トラストリスクの削減が期待されます。

具体例として:

  1. 生成AIモデルの学習

    Bitcoinの数学パズルの代わりにAIモデルを学習させ、精度向上を検証できればトークンをマイニングできます。これにより、ノードが協力してAIを育てる新たなブロックチェーンの価値が創出されます。

  2. zkEVMの証明生成

    Bitcoinの数学パズルの代わりにzkSNARKの証明生成させ、証明が検証に合格すればマイニングできます。これにより、オフチェーンスマートコントラクトのzkEVM/zkVMの実行結果の証明を早く生成した人がそのままブロックを提案できるようになります。
    https://fc23.ifca.ai/preproceedings/60.pdf

  3. プライバシー保護型データ分析

    複数のノードが秘密計算で暗号化データを解析し、結果を検証することで安全なデータ分析が可能になります。

  4. デジタル証明書の保存

    ブロック提案者が卒業証書や合格証といったデジタル証明書のMerkle Treeを構築し、検証者がその証明を確認することで、不正防止とパブリックな証明書検証を実現します。

結論

Beam ChainはEthereumの可能性を大きく広げ、より多くのイノベーションが生むことは間違いありません。

我々は10月よりzkVMの研究をスタートしており、最新アイデアの提案と実装にすでに着手しています。Beam Chainの実現も視野に入れて研究開発を引き続き進めていきます。

また、12月1日にzkVMに関する勉強会を開催予定です。zkVMの全体像を2時間で掴む内容となっており、Beam Chainについても少し触れる予定です。興味がある方はぜひご参加ください。

我々のzkVM研究に賛同いただける方はTwitter @grandchildrice までご連絡ください!


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